シミュレーションソフトウェアの高速化・高機能化

事例 - プログラムの安定性の向上

構造解析ソルバの高速化・高安定化(素材メーカー様)

ガラス素材の熱変形をシミュレートする社内製の構造解析ソルバのプログラムメンテナンスと機能強化を実施しました。
接触による剛性行列の振動を抑えるスムージングやトレランスの導入等の機能改善を行い、計算を大幅に安定化することに成功し、解析業務の効率化を実現しました。

解析安定性向上例 イメージ画像

▲ 解析安定性向上例

事例 - その他

主要HPC拠点における国産アプリケーション利用環境の構築(一般財団法人様)

スパコン「富岳」を始めとする国内の主要HPCI拠点を対象に、様々な分野の国産アプリケーションのインストール・動作検証・性能測定などを実施し、ユーザーが利用するための環境整備手順を作成してきました。

実績アプリ(一部)

分野 アプリケーション
流体・構造解析 FrontFlow/blue, FFX, FFVHC-ACE, FrontISTR
分子科学 GENESIS, MODYLAS, OpenMX, NTChem, SMASH
物性科学 PHASE/0, SALMON, HΦ, mVMC, Phonopy, ALAMODE, AkaiKKR

実績HPCI拠点(2024/6時点で稼働中のもの)

HPCI拠点 アーキテクチャ
「富岳」(理研),不老Type-I(名古屋大),Wisteria-O(Odyssey)(東大) A64FX
GrandChariot(北大),AOBA-B(東北大),Cygnus(筑波大),Wisteria-A(Aquarius)(東大),TSUBAME(東工大),不老Type-II(名古屋大),SQUID(阪大),Camphor3(京大),ITO(九大) x86_64
AOBA-A(東北大),SQUID(阪大) Aurora

分子科学計算ソフトウェアNTChemによる分子の電子スペクトルの高精度計算(理化学研究所様)

本業務では、分子科学計算ソフトウェアNTChemを用いて小規模分子の電子スペクトルを高精度で計算しました。

NTChemは理化学研究所計算科学研究機構で開発された分子科学計算ソフトウェアで、様々な電子状態計算手法を搭載しています。本業務ではNTChemに搭載された高次の結合クラスター法(coupled-cluster法、以下CC法)および2成分equation-of-motion-CC法(以下EOM-CC法)を用いて、小規模分子の電子スペクトルを解析し、成果を学術論文に発表しました。

量子化学計算における計算精度を左右する大きな要因は、電子どうしの相関による電子相関効果です。CC法は、波動関数のクラスター展開に基づいて、電子相関効果を高い精度で考慮できる手法です。クラスター展開を打ち切る次数によって、計算コストと精度を制御することが可能です。表1は、クラスター展開を打ち切る次数と計算コストの関係を示したものです。

手法 クラスター展開次数 計算コスト
CCS 1 O(N5)
CCSD 2 O(N6)
CCSDT 3 O(N8)
CCSDTQ 4 O(N10)

表1:CC法におけるクラスター展開次数と計算コスト

クラスター展開を2次で打ち切るCCSDや、3次の効果を摂動的に考慮したCCSD(T)は、精度とコストのバランスに優れることから小~中規模分子を対象とした多くの計算で用いられます。一方、3次の効果を完全に取り入れたCCSDTや4次の効果を完全に取り入れたCCSDTQは、高い計算コストのため適用例は限られているものの、高精度な結果を得ることができます。

量子化学計算における重要性が近年指摘され、数多くの研究が行われているのが相対論効果です。電子のスピン角運動量と軌道角運動量の相互作用から生じるスピン-軌道相互作用は、原子・分子の電子スペクトルにおける微細構造を再現するために不可欠となるほか、電子の質量が速度依存性を持つことで生じるsp軌道の収縮・df軌道の拡張は、特に重元素系の分子構造に定性的な変化をもたらします。

NTChemには上記のような電子相関および相対論効果を考慮するための機能が豊富にそろっており、今回はNTChemに搭載された2成分CCSDT法および2成分EOM-CCSDT法を用いて、スピン-起動相互作用をあらわに考慮した電子スペクトルの計算を実施しました。

結果の一例として、2成分IP-EOM-CCSDT法による計算で得られたOsO4分子のイオン化スペクトルを図1に示します。OsO4分子の第2イオン化ピークは、Os原子のスピン-軌道相互作用のため2つのピークに分裂することが知られており(図1のピークB, C)、本計算の結果はこの分裂の再現に成功しています。ピークA, Dについても実験スペクトルと計算値はよく一致しています。

図1:OsO4のイオン化スペクトル(計算 vs. 実験)

図1:OsO4のイオン化スペクトル(計算 vs. 実験)

図1に示された計算結果を始めとする一連の成果は論文にまとめられ、アメリカ化学会発行の査読付論文誌The Journal of Physical Chemistry Aに掲載されました。

OpenFOAM®への内製コードの組込み(造船メーカー様)

  • ・Fortran77形式で作成された内製コードをOpenFOAM®から呼び出すためのクラスを開発しました。
  • ・OpenFOAM®の定常解析ソルバの1つであるsimpleFoamに上記クラスを追加し、プロペラの推力を考慮した解析が実施可能としました。

シミュレーションソフトウェアの高速化・高機能化を支援するツールのご紹介

Super Matrix Solver 高速・高安定型マトリクスソルバライブラリ

Super Matrix Solver(スーパーマトリクスソルバ)は連立一次方程式求解用のソフトウェアライブラリです。熱流体解析や構造解析などの数値計算で用いられる連立一次方程式の求解計算を高速かつ安定的に実行することを目的として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で開発された基礎理論をベースにヴァイナスにより開発された製品です。
大規模かつ求解の困難な連立一次方程式を高精度かつ短時間で安定的に解くことができます。反復法・直接法・境界要素法専用ソルバなど複数の製品で構成されており、様々な分野でご利用可能です。

詳細はこちら

高速・高安定型マトリクスソルバライブラリ Super Matrix Solverロゴ

サービズについてフォームからのお問合せはこちら